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柔道整復師のための交通事故取扱ガイドライン ― 国土交通省・厚生労働省の指針に基づく適正運営 ―
- 2025.12.19
- お知らせ
交通事故の患者様への施術において、柔道整復師には高い臨床技術だけでなく、法令遵守(コンプライアンス)に基づいた正確な事務処理能力が求められます。本記事では、厚生労働省の広告規制および国土交通省の支払基準に基づき、医師との円滑な連携を軸とした実務の要点を整理しました。
1. 遵守すべき広告規制(厚生労働省ガイドライン)
2025年現在の最新ガイドラインでは、接骨院・整骨院における広告表現が厳格に定められています。不適切な表現は行政指導の対象となるため、以下のポイントを再確認してください。
- 禁止表現:「交通事故取扱」「自賠責保険取扱」などの文言を看板やチラシに直接記載することは原則不可です。
- 適正な表記:保険適用の説明に際しては「骨折・脱臼等は医師の同意が必要」であることを明記し、患者様に誤解を与えない配慮が求められます。
- ウェブサイト:SNSや公式サイトにおいても、医療広告ガイドラインに準じた誠実な情報発信が必要です。
2. 自賠責保険制度の仕組みと法定基準
自賠責保険は、被害者救済を目的とした強制保険です。施術費の算定は、国土交通大臣および内閣総理大臣が定める「支払基準」に準拠する必要があります。
支払基準の考え方
柔道整復師による施術費用は、「必要かつ妥当な範囲」において認められます。これは、単に通院回数を重ねるのではなく、医師の診断に基づき、医学的根拠をもって症状改善が進められているかどうかが重要視されます。
3. 実務上の重要ポイント:医師・保険会社との適正連携
トラブルを未然に防ぎ、患者様に最適な施術環境を提供するためには、医療機関との役割分担を明確にすることが不可欠です。
① 医師の診断・同意の尊重
柔道整復師には診断権限がありません。保険会社による施術費支払いの根拠は、常に整形外科等の医師による診断に基づきます。医師の診断部位と施術部位に齟齬がないよう、緊密な連携を推奨します。
② 医療機関との「併用受診」における留意点
同一日に同一部位の施術・診察を医療機関と接骨院の両方で行った場合、「二重通院」とみなされ、自賠責保険の支払対象外となるリスクがあります。患者様へ通院スケジュールの適切なアドバイスを行うことは、施術者の重要な義務です。
4. 事故発生から施術完了までの適正実務フロー
交通事故における負傷の回復には、医師による医学的判断を起点としたフローが最も理想的です。
| フェーズ | アクション(柔道整復師の役割と留意点) |
|---|---|
| 1. 医師の診察 | 最優先事項。医師の診察により、身体回復のために柔整施術(後療)が効果的であると認められた場合、医学的判断に基づき施術の必要性が確定します。 |
| 2. 保険会社への報告 | 患者様自身より保険会社へ「医師の判断に基づき、〇〇接骨院で施術を受けたい」旨を報告し、手続きの円滑化を図ります。 |
| 3. 施術の開始 | 医師の診断部位に基づき施術計画を策定。定期的に医療機関での経過観察を継続するよう指導しつつ、施術録を詳細に記録します。 |
| 4. 施術の完了 | 症状の改善を確認し、治癒または症状固定の判断を医師・保険会社と共有して適正に終了します。 |
5. 専門知識向上のための推薦資料
■ 療養費・算定基準の確認(厚生労働省公式)
令和4年9月21日付けで労災保険柔道整復師施術料金算定基準の実施上の留意事項が公表されました。
自賠責保険の算定ルールはこの内容を基準にしています。
👉労災保険柔道整復師施術料金算定基準について(令和4年度)|厚生労働省
適正なレセプト作成のため、以下の最新通知も必ずご確認ください。
- ▶ 柔道整復師の施術に係る療養費について(厚生労働省 案内ページ)
※制度の全体像と、最新の疑義解釈(Q&A)が掲載されています。 - ▶ 療養費の算定基準・通知一覧(PDFリンク集)
※「柔道整復師の施術に係る療養費の取扱いについて」の原文PDFが年度別にまとめられています。



